論文博士の数はどれくらい? 論文博士の調べ方。
博士の中の論文博士の割合
平成26年度の学校基本統計(文部科学省)で調べました。
文部科学省資料から引用
平成24年課程博士による学位授与者数は13,437人で、博士論文は2,465人となっており、約16%が論文博士となっています。
意外に多いイメージですか?
ちなみに平成3年では、課程博士が4,779人で論文博士が6,106人となっており、約56%が論文博士となっています。
ほんの20年前ですが、論文博士がかなり多かったんですね。
もう一つわかることは、少子化が進んでいますが、やはり博士の数は増えているということです。
ちなみに平成24年の論文博士の中で保健分野が52%程度です。
保健分野に何がメインで含まれるかわかりますか?
答えは医師(医学研究課)です。
論文博士取得者の約半数は医者なんです。
また人文が8%で、社会が7%です。
文系は、博士を取ることが大変困難で課程の4年間で取れないことが多いと言われています。
博士課程を満期退学して業績が出てから博士号を取得するケースが多いことから比較的人数が多くなっていると考えられます。
そんな中で技術系サラリーマンが多く該当する理学、工学、農学の論文博士取得者は少ないことがわかります。
薬学は保健に含まれると思われます。
東京大学の状況
東京大学も論文博士のデータを開示しているので見てみたいと思います。
このようなデータを開示しているのはさすが東大だと思います。貴重なデータです。
http://www.u-tokyo.ac.jp/stu04/e10_01_j.html
平成28年度の実績では、例えば工学は35人、理学は2人となっています。
全員が企業ではなく、アカデミックや公的な研究機関の所属の方も含まれると思いますが、現在でも論文博士の制度は残っていることが確認できます。
それでも人数はやはり少ないですね。
私自身、申請の前にこのページを最初見たときにとても少ないと実感しました。
それでもまだ制度が残っていると確信し、母校の恩師に相談しました。
私もある意味コネのようなものなのかもしれませんが、博士号取得を希望する皆様もチャンスを見つけて欲しいと思っています。
もちろん社会人向けコースも有力な選択肢だと思います。
論文博士の調べ方
では、ある大学で論文博士が取得している人がいるのか?またはどんな論文が出ているのか知りたいと思うことも多いと思います。
ネットで調べる方法が多くの大学であります。
学術リポジトリと呼ばれるものです。
リポジトリはIT用語で倉庫といった意味ですが、学術リポジトリは各大学の学術論文や教育資料などがデータベースとして保管され、公開されています。
多くの大学では大学の図書館のサイトから確認できます。
話は少し離れますが、博士号を取得した場合、取得した博士論文は課程博士、論文博士(乙)の何においてもこのリポジトリに登録され、公開されることが義務付けられています。
また審査に関わった先生方や審査のコメントも公開されます。
これにより、審査の透明性が高まってきています。
このような公開システムにより、第三者からレベルの低い研究内容で学位を与えたと批判されないように、博士論文の質も高められると期待されています。
それでは東京大学をまた例にして見ていきましょう。
著作権の関係があるかもしれませんので図を使わずに文字だけで失礼いたします。
・東京大学 リポジトリなどで検索します。
・左側のリストにある「資料タイプ別 / 研究科・部局別」をクリック。
・下にスクロールして「021博士論文」をクリック。
・検索語に「乙」を入力し検索する。
検索ワードで「論文博士」としてしまうと博士論文なども引っかかってしまうので、
「乙」のワードで絞り込みます。
課程博士は甲123XXのような番号、論文博士は乙123XXのような番号がつくことを利用します。
乙のつく名前や研究テーマもノイズとして引っかかりますので、そちらは除外してください。
・続いてソート「学位記番号」、昇順で変更ボタンを押します。
そうすると最近の論文博士の博士論文(ややこしい 😈 )が調べられます。
これにより主査の先生が誰かなどもわかります。
さらに裏技ですが、謝辞を見るとたいてい所属の関係者に感謝を示していますので、サラリーマンかアカデミックかもわかります。
公開されているものですが、悪用はしないでくださいね。
大学によっては、論文博士と課程博士で選択可能で、もっと簡単に調べられるところもありますし、乙作戦でも絞り込めない大学もあります。
博士論文データベース
博士論文のデータベースがCiNiiから公開されています。
https://ci.nii.ac.jp/d/
タイトルや著者が明確な場合はこちらで検索した方がはやいです。
ディスカッション
コメント一覧
>文系は、博士を取ることが大変困難で課程の4年間で取れないことが多いと言われています。
大学院の課程は普通前期2年、後期3年と思います。
私は文系で20年ほど前に出身大学から論文博士を取得しました。
文系(文学)でも最近はかなり博士の学位を出すようになってきました。優秀な方は修士取得後後期課程に進学し、3年で課程博士を受領する方もありますが、多くは満期退学後数年して再入学し、論文を完成するようです。修士論文は書物の1章分くらいですが、博士論文は1冊分くらいで、英文の場合も2~300ページくらいは必要だと思います。課程博士であれば指導教授が当然主査になるので、指導教授を納得させる論文が書ければ学位取得が可能な時代になりました。場合によっては主査や副査が学位未取得というケースもあります。
文系の論文博士は大学の教授が過去の研究をまとめて1冊の書物程度の内容にし、審査を受ける場合が多いと思いますが、主査が申請受領を認めなければならないので、大学によっては機会が限定されていると思います。特に国立大学法人の場合文系は講座制でしょうから主任教授の専門が限られており、その方の守備範囲でしか審査はできないと思います。
最近は学位授与が大学評価の一つにもなるので、課程博士が出た専攻科では主任教授がめぼしい修了生(卒業生)に学位申請を出すよう慫慂する場合もあります。私の場合もそうでしたが、通常目立った学会活動をしていなければ声をかけられません。査読を通ったものなど、自信のある論文の抜き刷りを主任教授に送っておくのも有効かと思います。文系の場合国内外の査読雑誌に掲載されても気付かれない場合が多いのが現状です。ましてや引用回数など数える機関も人もいないし、意味がありません。学位申請を出すよう声をかけられたときに素早く対応するかどうかで決まるともいえます。声をかけてくれた主任教授が在職の間に対応せねばチャンスは失われます。私の場合はそんなわけで乙号博士(文学)第1号でしたが、後にもう一名続いた後、この主任教授は退職、その後大学院自体が改組されてしまい博士(文学)/文学博士の学位は課程を含め10名足らずの取得で終わりました。地方の小規模大学ゆえの結果かもしれません。
私学では文学語学系の大学院の場合、現在でも学位なしで後期課程の指導教授まで昇格することもあります。大学、および大学院教員の採用・昇格に必要な資格が学位またはそれに相当する業績となっているためですが、最近は博士学位取得者が多くなってきました。特にアメリカの無名大学のPh.D取得者が多いので、今後は学位取得機関の特定が重要になってくるかと予測されます。