スペインバルセロナのとってもオシャレな大学! Harbour.Space University とは?
という記事を書きましたところ
スペインにある Harbour.Space University という大学の職員 (Business Development という職だそうです) をされている奥野さん(日本の方です)よりお問い合わせをいただきました!
なんでも2016年に開校された新しい大学で、テクノロジーとデザイン、アントレプレナーシップ育成に特化した大学なようです。
ネットで検索するとなんか近代的な雰囲気が漂う大学です。
せっかくの機会なので逆にインタビューをさせていただきました。
↓ここがバーやレストランではなく大学ですよ!地中海をみながら授業を受けられるようです。
↓ 授業風景もオシャレ感漂いますね。
いきなり本題ではないのですが・・・
そもそも奥野さんは、どういった経緯でハーバー・スペース大学(HSU)で働くことになったのですか?
元々、ハーバー・スペース大学に通われていた日本人学生と知り合いで、その方が日本に帰国された際、大学が従業員として日本人を探していました。私もその際仕事を探していたため、紹介してもらい昨年7月より働くことになりました。
スペインの大学や学生について
MBAではスペインだとIEビジネススクールが有名ですが、スペインの大学や教育は日本と比較してどんな特色があります?
全く違いますね。義務教育はトータル10年(初等教育6年+中等教育4年)、高等教育は、大学に入学する資格を与えられる機関(バチジェラト)と、専門性を磨く機関(シクロス・フォルマティボ)の2種類あります。
日本のように有名大学が一極集中しているというよりは、各州にそれぞれ優秀な大学があり、学生は自分の通える範囲内で進学します。日本のシステムと似てるのは、公立大学に入るための全国統一試験があるところでしょうか。
シクロス・フォルマティボスというのは日本の高専とか専門学校とは全く違うものですか?
似ています。ただ、専門分野にて卒業後すぐ即戦力になる職業人を育てる目的で作られています。なので、知識・教養+実践的な技術・技能を習得するという意味で、専門学校+職業訓練校というイメージが近いです。
なるほど、大学のシステムは結構違うものですね。他に日本と大きく違うところはどんなところがありますか?
考え方の違いを大きく感じますね。
- 学生の意識
どの学生と話しても、自分の学生時代と比べ、ちゃんとしてるなぁと毎回関心します(笑) 個人的な印象になりますが、日本の大学は、「やりたいことを見つける場所」「最後に遊べる場所」で、一方スペインでは、自分は何をしたくてこの学部を選び、将来はこんな道に進みたい、というビジョンを全員持っています。バチジェラトは3つの分野に分かれ、その分野がそのまま受験する公立大学の学部になり、就職時も企業は募集ポジションと卒業学部の関連性を重視します。そのためスペイン人は中学終わりの頃から、自分の将来について考える必要があるんです!
私の知るほとんどの学生が「なぜ自分はここにいるのか」を説明できますよ。- 個人の意識
スペイン国内でも大学ランキングがあり、大学の良し悪しは当然あります。
ただ、先ほど説明したシクロス・フォルマティボスに進学する人も多いし、一度企業で働いたけど、辞めて違う分野を勉強するために学校に入り直したり、海外の大学へ進学し直したりと様々ですね。個人の選択を認め、それを受け入れる社会の考え方が浸透しているように感じます。
そのような考え方は、欧州全体で共通するものですか?それともスペイン特有な思考だったりします?
共通だと思います。ハーバー・スペース大学の学生や同僚含め、今までバルセロナで出会った幅広い国籍・年齢の人たちみんな、人生の様々なタイミングで、色んな選択をしていました。欧州全体で、この考えが根底にあるのではないかと感じます。
HSUについて
HSUはどんな目的で設立されたのでしょうか?日本でいう”建学の精神”ってやつですが、どんな経緯があったのでしょうか?
- 「技術社会がさらに進歩するにつれて、各産業のヒーローとなる人材を生み出すために、従来の教育システムを変革し、時代に合った教育と環境を学生に提供したい。そしてハーバー・スペース大学が教育と産業の架け橋になりたい」というのが設立者の一人で現CEOのSvetlana Velikanovaの考えです。
- なんでも、教育と産業が、才能ある若者たちへ適切に機能していない状況を変えたいと考え、才能ある若者たちが良い教育を受け、そして産業界へ好影響を与えたいというモチベーションから設立に至ったとのことです。
- HSUは、理論や暗記のみ必要とされる試験や聞いているだけの授業といった従来の伝統的な教育システムに代わる機関として設立されています。
うん、日本でもかなり思い当たりますね(笑)
そうですね(笑)
HSUでは、インタラクティブ な講義参加はもちろんですが、伝統的な先生の代わりに業界のリーダー達を頻繁に授業に招集していて、かなり新しい教育システムモデルに挑戦しています。
HSUは、テクノロジーとデザインに特化とウェブサイトに書かれていましたが、数学や化学といった基礎科目やいわゆる文系の専攻はないのでしょうか?
いわゆる”文系”学部はないです。
全てのコースが何らかの「テクノロジー」に関連しているんです。例えばインタラクション・デザイン、デジタル・マーケティング、フィンテック、スーパーシティ、サイバー・セキュリティといった、テクノロジー社会のトレンドを意識し、時代にマッチしたプログラム、カリキュラムを提供しています。
設立間もない大学ということもあって、最近のトレンドに近い領域ですね。
他の特徴としては、クリティカル・シンキングと数理のプログラムから構成された「第二言語としての数学(Maths as a Second Language)」を、来たるコンピュータプログラミングの未来に向けて、教養過程として設けています。
大学では他にどんな授業やプログラムを受講しますか?
講義は1日3時間で、全て英語によるものです。
3時間というのはかなり少なそうに見えますよね?でも講義以外に自身のプロジェクトに取り組んでもらいます。また毎日の課題やグループディスカッション、チームプロジェクトに地元企業とのハッカソンやワークショップやイベントに積極的な参加を求めています。そこで座学だけではない、実践的な経験を積むことができます。
今聞いただけでもやるべきことが多そうですね。そんななか、学生さんはどんな点に興味を持たれて入学されていますか?
当然生徒によって様々ですが、みんなに共通しているのは「普通とは”違う”学校にいきたかったから」ということです。いわゆる「一般大学」は、2学期制で教授がいて講義があって、そこに毎日いって机で勉強して、、ということではなく、もっと実践的でユニークな経験ができることを期待て入学してくれています。
その上で他にはない学部や講師陣などを見て、興味を持って来てくれています。
スペインやヨーロッパの中でも特徴的な大学なんですね!?
学生の構成は?
MBAなどでは、欧州の大学はアメリカよりずっとグローバルだという意見も耳にしたことがありますが、HSUの学生は国籍だったり年齢などどんな構成でしょうか?
- 欧州各国を中心に約40ヶ国から集まっています。
欧州以外だと、ロシア、キルギス、シリア、イラン、南アフリカ、UAE、インド、ベトナム、中国、タイ、エジプト、アメリカ等です。日本の学生もいますよ。- 年齢層は、18才から40才と幅広く、平均は約25才となっています。
- 学生達のバックグランドは様々で、会社をやめて学び直しに来る学生や、既に自分で事業をしながら学校に通っている学生もいます。
- このダイバーシティは弊学の大きな魅力の一つです。在学中にできたコネクションは、卒業後一気に全世界へと広がります。
日本の学生もいるんですね!
はい。ロボティクスの奨学金プログラムに合格された方です。
スペインの環境
奥野さんは日本の方ですが、日本の学生が生活や勉強をする環境としてスペインやHSUはどうですか?
- バルセロナの環境
- 私は在住4年半ですが、とても快適です。欧州の都市部であるロンドンやパリなどの中では比較的物価が安く、地中海気候で一年中穏やかです。世界有数の観光都市なので、交通機関も整っていて英語で生活できます。
- 親日家も多いですし、お米や魚介類を日常的に食べるので、食生活も日本人に合っていると思います。中国系スーパーが多く、日本の食材も手に入りやすいです。
- また、欧州各国へのアクセスが良いので、週末を利用して安くヨーロッパ旅行ができます。
- HSUの環境
- 先に挙げた、約40カ国から集まる学生たちのダイバーシティは他では体験できません。
- 予定ですが6月に新キャンパスへ移転し、さらに新しい綺麗なスペースで学校生活が送れる予定です!そして2020年(予定)にはバンコクキャンパスもオープン予定です。
- グローバルなコネクションや、自身を成長させる機会を積極的に求める人には最適な環境をが揃っていると思いますよ!
個人的にはバンコクキャンパスが相当魅力的です(笑)仕事を休職してタイで勉強なんてできたら最高ですね。
教授陣の特徴
教授陣はいかがですか?
- 講師陣は地元のバルセロナはもちろん、ニューヨーク、ロンドン、ロシアなどから、各業界のトップリーダーを招集しています。博士号をもつ教授のみならず、ウェブデベロッパー、データアナリスト、デザイナー、エコノミスト、IT企業など、まさに今・最前線を走っている講師陣から最新のビジネストレンドが学べます。
- テック系学部の特徴は、ロシアの強豪大学やテック会社から一流講師を招いています。
例えば、CodeforcesのCEO(世界一のオンラインプログラミングコンテスト)である、マイク・ミルザヤノフの授業は毎回人気です。
実はロシアは世界一エンジニアを輩出しているテック先進国です。*1*2
ICPCというプログラミング世界大会も2019年大会含め、4年連続でロシアの大学が優勝しています。*3
HSUはそれらの大学・企業とパートナーシップを組み、他では経験できない授業を展開しています。*1 https://interestingengineering.com/top-10-countries-with-the-most-engineering-graduates
*2 https://engineer.fabcross.jp/archeive/20160920_unesco_ifs.html
就職について
気になるのは就職先についてですがどんな感じですか?
欧州以外に母国へ帰る、アメリカなど・・・どんな企業が人気ですか?また起業はどうですか?
- 設置学部の特徴から、やはりインターナショナルなテック企業に就職する卒業生がほとんどです。ポジションは様々ですが、以下のような企業です。
Google、IBM、BBDO、Accenture、Deloitte、Core competence leadsnado- また、昨年度の卒業生で起業家が誕生しました。
Founder & CEO at Banki
彼女はインタラクションデザインの卒業生で、在学中からこのプロジェクトを取組み、先日見事ローンチしました。- 就労ビザの問題もあるので、EU以外の学生のほとんどは卒業後母国へ帰りますが、中にはヨーロッパ内で就職する学生もいます。
- 卒業生の90%以上が企業に就職しています。
最後に
私のブログでは社会人のリカレント教育をテーマの一つとしています。
海外から見て日本の社会人と海外の社会人の考え方の違いなどで思うことがありますか?
私の思うことを海外の社会人と一括りにするのは恐れ多いんですが、、
あくまでも私の周りの日本人以外の人たちを見ると、良い意味でも悪い意味でも、自分に正直に生きています。その人がいつ、どのタイミングで何をしようとその人の責任で、それを尊重します。
また英語と同じようにスペイン語でも「社会人」と直訳できる言葉がないんですよね。周知の通り、スペインも新卒一括採用の制度はありません。飲酒・喫煙可能な年齢の法律的な線引きはあっても、日本のような「大学卒業したら社会人」という明確な概念はありません。
このことも、リカレント教育という視点で見たとき、年齢関係なくいつでも好きなタイミングで学べるいう環境を後押ししているように感じます。
もちろん悪い面もあって、
スペインにおいては、経済悪化で2019年2月時点で25才以下の失業率が32.4%・全体では13.9%*と、日本と比べると危機的数字です。ただそんな中でも、自分たちの幸せを優先する、ラテン気質のお国柄なんでしょうか、人生満足度は日本より優っているように見えます。
また、現在の同僚や今まで出会った人々は、常に何か自分のやりたいことを素直にチャレンジしています。社会の枠や固定概念にとらわれることのない人達が、日本より多いと言えるのではないでしょうか。
奥野さん、今回はたくさんの質問に答えていただき、ありがとうございました。
HSUはもちろんですが、スペインやヨーロッパの大学の雰囲気も教えていただけて面白かったです。他にもご回答いただいたものがたくさんあるのですが、長くなりすぎるので削らせていただきました・・・
大学留学を目指す高校生はもちろん、大学院進学を目指す大卒の方、社会人の方も大歓迎とのことです。
問い合わせはinfo(アットマーク)harbour.space まで、日本語でメールいただければ、日本人スタッフ(奥野さん)が全て対応してくれるとのことです。
こんなことを聞いて欲しいということがあれば、お問い合わせやコメント欄に書いていただければ、筆者である私から質問することも可能です。
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