バイオ事業への参入② ニッスイグループ〜魚の脂と薬〜

さて、次に取り上げる企業はニッスイこと日本水産です。

 

日本水産について

主な事業内容は水産事業と食品事業です。

水産事業は主に海産物、食品事業は冷凍食品などが有名です。

2018年3月期では、

売り上げ:約6800億円

経常利益:約248億円

経常利益率:3.6%

となっております。

売り上げの内訳として、

水産事業:2870億円、食品事業3277億円

となりほとんどこの二つの事業で構成されています。

 

魚から薬へ

ニッスイのバイオ分野として取り上げるのは、EPA(エイコサペンタエン酸)という成分です。

この事業は、ファインケミカル事業領域に属するようで、売り上げ規模は他と比べると小さいようです。

このEPAですが、魚に多く含まれる油(脂)の一種で、動脈硬化の原因となる脂質異常症の治療や心筋梗塞の予防薬として有名です。

最近では、テレビでもオメガ-3系脂肪酸という言葉を聞くようになりましたが、EPAはこのオメガ−3系脂肪酸の一つです。

 

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心臓病と魚の脂

さて、そもそもなぜに魚の脂が話題になっているかというと、ある一つの研究結果に由来します。

Dyerberg J, et al. Lancet 1978;2:117-9

Lancetという、インパクトファクターが45もあるような雑誌ですが、この論文はGoogle scholar によると、2000回以上引用されているお化け論文の一つです。

この研究ですが、1970年頃のグリーンランドの調査で、原住民であるイヌイットの方々とデンマーク人の方々の心筋梗塞による死亡率を比較したものになります。

イヌイットは、北極圏で生活を営むため、食料として穀物や野菜を摂取することが難しい状況でした。そのため、当時彼らの食事としては、アザラシ、魚など海域に生息する動物肉が主でした。

寒い環境にいるし、肉ばっかり食べてるし、イヌイットの方が心臓病になりやすいと思いませんか?

ところがこの研究が示したのは、イヌイットの方が心臓病の発生率も死亡率も低いものでした。

それもバツグンに低い結果でした。

この研究に端をなし、理由の解明が進められ、

魚の脂肪分に多く含まれるEPAが血中の総コレステロール濃度を低下させ、その結果として心筋梗塞の発症を抑えていることがわかっています。

 

イヌイットの悲劇

そんなイヌイットですが現在はどうなっているでしょうか?

ご多聞にもれず、イヌイットにもグローバル化は訪れ、食事の欧米化(日本人に対して使う言葉ですねw)というかファストフード色などの現代食を摂取するようになり、比較対象であったデンマーク人と同じような食習慣に徐々に変わっていったようです。

その結果、心筋梗塞の発症率も同じように少しずつ上がってきているようです。これは我々日本人も同様で、本来の和食から現代食に変わって、心筋梗塞の発症率は増えてきています。

 

EPAの原料は?

ということで話が大きく展開してしましましたが、EPAが薬となりうるということはご理解いただけたかと思います。アメリカでは、薬というよりサプリメントとして摂取する方も増えてきているようです。

このEPAですが、有機合成ではなく魚そのものから抽出した方がコストメリットがあります。ということで水産事業を営むニッスイが薬剤の原料メーカーに成りえたのです。

1980年ころから、ニッスイはEPAの研究を本格的に進めてきたようです。

従来、廃棄していた魚や部位からも抽出することができ、余すことなく海洋資源を使うことにも成功しているようです。

 

 

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