論文博士(乙)のメリットとデメリット

論文博士が、今後無くなる可能性については過去の記事で紹介しました。

https://researcher-gakui.com/ronpaku-79

しかしながら現在でも制度は細々とではありますが残っていて、私も論文博士(乙)で学位を取得することができました。

今回は企業に勤めながら博士号を取得する場合、論文博士(乙)と課程博士のメリットとデメリットについて記載したいと思います。

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論文博士(乙)のメリット

仕事と両立ができる。

日々、仕事で研究していればその内容が博士論文のテーマとなります。もちろん博士論文用に新たなデータを取得する必要がありますが作業量自体は多くありません。

また、大学に通う必要もありませんので有給を取得する回数も少なく、休学の必要もありません。学位申請は学位授与式(3月、9月など大学によって複数回ある)から逆算して1年から遅くても半年くらい前から作業が始まりますが、大学には10回も通わずに取得できました。

上司や会社の許可が要らない。だけど論文執筆は注意が必要。

上のメリットにもつながりますが、仕事に大きな穴を開けないため、あらかじめ学位を取得することを伝える必要が最低限に抑えられます。私自身も会社関係者では数人しか学位を取ろうとしていたことを伝えていません。これは、会社の規則なども関係する可能性がありますので会社ごとに確認してください。

特に複数の従業員で同じテーマを研究していた場合、自分が学位を取ると同僚が主論文としてとして使えなくなりますのでトラブルの元になる可能性があります。共著者には、学位を取る旨をあらかじめ伝える必要があります。申請の課程で、主論文の共著者には同意を取った文書の提出が求められますので避けては通れません。

また、原著論文を勝手に書くことは認められない会社が多いと思います。特許などの知的財産や販売戦略に影響します。必ず所定の手続きで論文執筆の許可を取得してください。学会なども申請の必要があると思いますのでその段階を経る必要があります。博士論文(申請用論文)に関しては、原著論文を元にしたもので新たな知見やノウハウを記載しなければ、会社の許可が必要ないかもしれません。いずれにせよ場合によっては訴えられる可能性すらありますので論文の執筆や公開には特に気を使ってください。

費用が安い。しかもとてつもなく。

論文博士(乙)の申請費(論文審査料)は少し調べたところ、国立や私立で差があるわけではなく、5〜10万円程度でバラバラです。

例えば九州大学では、¥57000と記載されています。

http://portal.isee.kyushu-u.ac.jp/campuslife/procedure/degree/summary.html

東大は16万円と記載されています。

http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~edudaiga/daigakuin/document/dissertation_doctor_01.pdf

他にかかる可能性はわかりませんが、学費と比べると激安です。出身校であると割引があるところもあります。

審査をしていただく先生方には、大変なだけでほとんどボランティアで実施いただくことになります。

大学に取ってもあまりメリットがない制度ですから、廃止に進んでしますことも納得してしまいます。

論文博士(乙)のデメリット

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何かしらのコネが必要。母校か共同研究先か。

論文博士(乙)を取得する上で一番のネックが、どこで学位を取得できるかです。

大学受験や高校受験のようにどこでも願書が出せるわけではありません。大学の事務手続きとしては事前に教授(主査を引き受ける先生)と内々に話を通しておく必要があります。先の通り、先生にとって論文博士(乙)の審査はほとんどボランティアですから、何処の馬の骨とも知らない人をすんなりと引き受けてもらえるわけではありません。そういう意味でコネが必要です。

頼りどころとしては、まず母校の先生となります。私自身も学部と修士課程でお世話になった先生にお願いいたしました。論文に先生の名前が載っていないにもかかわらず引き受けてくださることはコネを利用したという他ありません。もし、企業で研究をしていて他の大学と共同研究をしている場合、その共同研究先の先生にお願いしてみるのも一つの手です。大学の場合、学生もいますのでその学生の学位取得がメインとなってしまうかもしれませんが、サブ解析でも構わないので論文を書かせていただけないか確認してみてはいかがでしょうか?Give and Take の精神で研究や論文執筆に貢献しおこぼれをいただきましょう。学位取得の際に論文のインパクトファクターは高ければ高いほど望ましいですが、それよりもアクセプトされることに重きを起きましょう。大学によっては最低限の雑誌やインパクトファクターを指定されることもあるかもしれませんが、それらを除き審査のある論文にアクセプトされることが学位を得るための最低限のことになります。

共同研究先の先生も向こうから学位取得を呼びかけていただけるとは限りません。自分から声かけし、熱い想いを伝え、先生の心を動かしましょう。

求められる業績の量が多い。

課程博士の場合は、英語の査読付き論文を1報書くことで博士号取得の条件を満たすところもあります。博士課程(乙)の場合は、少なくとも3報と書かれていることもありますが、実際はもっと求められていると思います。あくまでも主論文として3報ということで求められる本数は明文化されていません。大学でも異なりますし、主査の先生によっても考え方の違いで変わる可能性があります。論文博士(乙)の実施に関してハードルとすることができるので中には、30代では到底無理な本数が要求される場合があります。ある程度業績が出た段階で、母校の先生やつながりのある先生、場合によっては大学の事務部に伺ってみるしかないと思います。論文博士の申請要領が公開されているかと言って、大学にいきなり申請書を送っても対応に困るだけです。主査を引き受けていただきたい先生に必ず事前にコンタクトを取り相談する必要があります。

大学院教育を受けられない。

課程博士は、博士号を取得することを一つの目的にしていますが、研究者としての教育を実施する面も大きな目的の一つです。実際にこの機能が課程で十分に果たせているかの議論もありますが、少なくとも3年間をかけてアカデミックの研究にどっぷり浸かって学べることは大きいと思います。一方、論文博士(乙)の場合は、企業では研究者といってもビジネスの一部であり、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)が教育の中心であり、研究者としての教育が充分にされることはないと思います。

課程博士と同等な扱いを受けるかはわからない。

論文博士の廃止に向かう前提にもなっていますが、論文博士(乙)は日本独自のローカルな制度となっています。論文博士(乙)を学位として認めないと思っている人も多くいます。履歴書を書く場合、論文博士の記載の仕方に困ることも多いです。転職の面接でも論文博士で取得したことをしっかり述べた方が良いと思います。制度のない海外ではディプロマミル(お金で学位を買うなど正当に授与されていない学位)と勘違いされることもあるようです。

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