博士のコホート研究・「博士人材追跡調査」(1)

コホート研究とは、主に医学の疫学研究で用いられる手法で、ある集団に対して健康状態や環境を一定期間追跡調査して、その後の結果に対して要因を調べる研究です。

例えば、喫煙と肺がんに関して、

喫煙者の集団と禁煙者の集団を若いうち(健康な状態)から調べて行って、二十年後にどちらの集団が肺がんになったかというものを調査して、喫煙とガンの因果関係を調べる

といったものです。

 

今回、博士号取得者のコホート研究のようなものが発表されました。

 

科学技術・学術政策研究所「博士人材追跡調査」第2次報告書(速報版)の公表について

平成29年8月24日

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では2016年11月に「博士人材追跡調査」を実施いたしました。 調査結果を取りまとめ、「博士人材追跡調査」第2次報告書(速報版)を作成いたしました。本結果(速報版)は暫定版であり、正式な報告書は2017年末に公表する予定です。

今回は速報版とのことです。

 

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中身を見ていきましょう。

http://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP_jd-pro2016_flash_pressJ.pdf

 

背景

毎年15,000人程度が大学院博士課程を修了し、科学技術イノベーショ ンの重要な担い手として広く社会で活躍しています。しかし近年、研究における競争 的環境の激化や雇用情勢等の影響により、専門性を生かしたキャリアの構築が困難で あることが問題となっています。

そのため、文部科学省 科学技術・学術政策研究所(所長:加藤 重治)では、博士 課程を修了した者を対象にした「博士人材追跡調査」(JD-Pro:Japan Doctoral Human Resource Profiling)を平成 26 年に開始し、この結果は「『博士人材追跡調査』 第 1 次報告書」NISTEP REPORT No.165(平成 27 年 11 月)としてまとめています。今回は、 この継続調査として平成 28 年 11 月に実施した調査の結果を「『博士人材追跡調査』第 2 次報告書(速報版)」として公表します。速報版では、大学院博士課程への進学理由 と満足度、現在の雇用状況、博士人材の地域間移動等について調査結果を報告してい ます。

主にポスドク問題に代表される博士号取得後のキャリアパスの研究の報告です。

平成 28 年 11 月に実施した調査は、以下の 2 つです。
A)2012 年コホート *3.5 年後調査
2012 年度に博士課程を修了した者への 2 回目の調査で、修了 3 年半後の状況を調べてい ます。
B)2015 年コホート 0.5 年後調査
2015 年度に博士課程を修了した者への 1 回目の調査で、博士課程の状況や、修了半年後 の状況を調べています。

比較的中期(修了後3.5年)と短期(修了後半年)の結果となります。

 

1. 博士課程への進学理由と満足度

2015 年コホートの進学理由を見ると、課程学生では「研究したい課題や問題意識があ った」、「研究することに興味・関心があった」が相対的に多くなっています。企業等に 在籍(休職含む)しながら博士課程に進学した社会人学生では「雇用先で勧められた、ま たは雇用先で学位が必要だった」、外国人学生では「フェローシップ等が得られた」とい った理由が突出しています。博士課程満足度は、外国人学生>社会人学生>課 程学生、の順で高くなっています。

社会人博士が課程博士より博士に対する満足度が高い結果となっています。

課程博士の方は、進学に当たって研究ありきで進学した様子が感じられます。

社会人は研究内容よりも博士をとることのモチベーションが高いためギャップが少ないのかもしれません。

それより特筆すべきは外国人学生ですね。モチベーションの高さが伺えます。

博士に進学する理由も、

大学教員や研究者になるために必須だった

博士号を取れば、良い仕事や良い収入が期待できる

という内容が高く、海外(アジアの方が多いと思いますが)では博士号により優位なポジションを得られることが伺えます。

 

4. 博士課程修了後のキャリア展開

2012 年コホートの 1.5 年後から 3.5 年後の 2 年間に、雇用先機関の大きな変化は見ら れず、大学等では 1.7 ポイント増加(50.9%→52.6%)、公的研究機関では 3.6 ポイン ト減少(11.0%→7.4%)、民間企業では 1.6 ポイント減少(27.7%→26.1%)となっ ています。博士課程修了 3 年半後もアカデミア(大学等や公的研究機関)で就業してい る者が多く、セクター別に見た分布は、ほとんど変化がありません。また、2015 年コホ ートにおいても、修了からの調査時点が異なるものの 2012 年コホートと同様に大学等 に在籍する者が半数以上と多く、修了年による大きな違いは見られません(図表 4-1)。

博士の受け皿としては、大学機関が多いという結果になっています。

継続して「アカデミア」で雇用されている者が約 9 割で、「民間企 業」への移動は 3%、「その他」への移動は 8%となっており、アカデミアから民間企業へ 転職するケースが少ないことが分かります。

増えてきた印象もありますが、アカデミックから企業に転職する人の割合はたった3%に過ぎないという結果です。かなり少ないですね!

アカデミックからアカデミックに転職する割合が9割です。